嘘つきな婚約者
2、 婚約までの道のり
良さんと私は、打ち合わせの後に、食事をした。
大原先輩が一緒だったり、木崎建設の人もいたりと、二人きりではないが、3回ほど食事をした。
良さんは、終始、人の話を微笑んで聞いている。
自ら話をすることがない。
話を振られて返事はするものの、その返事も一言二言だけ。
私とも、距離を縮めようとはしない。
父親同士の意図的な目論見など、まるでなかったかのような態度に、私もどう対応してよいか先が見えない。
悪い人には思えないが、どうにも掴めない人物だ。
たまに見せる笑顔に、ドキッとさせられるのは、昔の好きだった人の面影が重なるからだろうか。
高校時代の切ない思い出。
もう10年も前のことなのに、あの時の辛い気持ちを、私はまだ引きずっている。
だって、あれから私は、男性が信じられなくなり、誰とも付き合うことなく、今に至っているのだから。