恋愛失調症
忘れていないわけではなかった
兄が思い出さないように、言い出さないようにしていたのだ
「そんなの、いらないから」
「照れるなよ、あいつの弟だからって意識してるんじゃないだろうな?」
「そんなわけないでしょ?」
わたしはすぐさま否定した
「だったら受けとれよ……」
「え!?」
力が怯んだその瞬間をつかれて兄のスバルの唇が重なる
「おい!なずなちゃん嫌がってるじゃないか」
そう言ってわたしの手首を引き寄せた
「嫌がってるどころか、石井におびえてるの分からないのか?」
兄の舌打ちは校舎に悲しく響いた
わたしは誠に助けて貰ってありがとうも言わず、二人の間をすり抜けてその場を去ってしまった