たんぽぽの幸せ
日も暮れ始めてきた頃、長々と母、千代子のショッピングに付き合わされた清四郎と父、宗次郎は手の限界を感じていた。
いくらお金に困っていないっと言っても、歩くのが不自由になるほど物を買わなくてもいいのではないか。
ーーっと、足取りの悪い2人は前を颯爽と歩く女性に同じ想いを募らせる。
しかしながら、今日買っていた服や靴やアクセサリー…どれも母の年齢には不似合いのものばかり。
だが、いつまでも老けを知らない母には、この言葉が嫌味の一つにもならない事を少年は知っていた。
先程からもすれ違う外人男性を意味もなく振り向かせてしまう母が恐ろしい。
「…清四郎、まだ持てそうか?」
「うん、大丈夫だよ。」
僕を気にして声をかけてくれる父だが、その手には僕が持っている紙袋の2倍の量が目に入る。
18歳にもなって甘えてもいられない。
「清ちゃん、宗ちゃん!!そろそろホテルに戻りまーーきゃっ!?」
「「ーーーっ!?」」
母の朗らかな声が、一瞬にして緊迫とした空気にまじれて消える。
「ーーすまん、清四郎。」
そう言うと、父は僕の足元に荷物を放り投げ、母の元へ走り出す。
どうやら、ガラの悪い人に目をつけられたようだ。
少年は父に託された荷物を手に持ってその場へ向かおうとするが、荷物が多すぎて手に収まらない。
しょうがなく、人混みの隙間からなんとか状況を判断しようとする。