夫の優しさ、夫の強さ
正志さんは、
「彼女は、離婚して、子どもを産むことにしたそうだ。」
先程は、その事を連絡してきたのだろう。
「僕は、紗耶香を愛してる。彼女とやり直す気持ちはない。」
「じゃあ、子どもの責任はとらないの?」
「彼女も、僕と結婚するつもりはないそうだ。ただ、産まれたら、認知だけしてほしいと言ってきた。」
「認知……」
「だから、紗耶香さえ、僕を許してくれるなら、このまま何も変わらない。」
「このまま、生活していくの?」
「僕たちは、僕たちの生活を続けていこう。」
私は、まだ、どうしたらよいのか、考えられなかった。
「少し、考えさせてほしい。」
「いいよ、考えて、結論が出たら、僕に話して。」
正志さんは、私を抱き寄せようと肩に手をかけてきたが、私は、すっとそれをかわした。
意識したわけではないが、今、触れてほしくはなかった。身体が勝手に動いたのだ。
このまま、何もなかったように、生活を続けていけるの?