夫の優しさ、夫の強さ


その後、お互いの両親と話をして、離婚届を出した。

慰謝料はいらないと言ったのに、正志さんは、仕事も止めてしまったのだから、当面の生活費にするようにと、私の口座に振り込んでくれた。

いつも私のことを考えてくれていたことを思い出していた。

大恋愛ではないけれど、正志さんを信頼し頼っていたのだ。

あの優しい笑顔が大好きだった。

側にいて、幸せだった。

引っ越しを済ませ、実家の自室に入ると、声をあげて泣いた。

今まで、何故か涙を流せずにいたのだ。

ショックが大き過ぎて、現実として捉えられず、泣けなかったのかもしれない。

改めて、一人なんだと自覚して、初めて涙が出た。

これから、ずっと二人で生きていくはずだったのに、一人になってしまった。

もう、人を好きになる力が沸いてこなくなっていた。

あんな裏切られ方をされて、男は、みんな信用できないと考えるようになったのだ。
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