夫の優しさ、夫の強さ
次の日の夕方、退勤しようと、従業員の出入り口から出ると、正志さんが待っていた。
「紗耶香、突然ですまない。ちょっと話がしたいんだけど、時間もらえないか?」
本当に突然で、びっくりしてしまい、言葉が出てこない。
「私に?……」
やっとそれだけ言えた。
「夕食でも食べながら…………、だめかな?」
「わかりました。」
「ありがとう。何が食べたい?」
「何でも。」
正志さんは、落ち着いた和食のレストランに連れてきてくれた。
壁と衝立で区切られ、半個室のようになっていて、回りが気にならないようになっている。
「コースでいいかな?」
「食べきれないかも。」
「いいよ。食べれるだけで。」