夫の優しさ、夫の強さ
「私は、……」
「紗耶香、今、結論を出さないでほしい。少し考えてみてくれないか。僕を許せるかどうか、信じることができるかどうか、だと思うんだ。紗耶香の正直な気持ちをおしえてほしい。これからは、決して紗耶香に辛い思いをさせないと誓うから。結論が出たら連絡して。さあ、食べよう。」
私は、促されるまま、食べ始めた。
「正志さん、もしかしたら、私、しばらくニューヨークに行くかもしれないの。」
「どうして?」
「ニューヨークのグランドシティホテルの支配人が、時々来ていて、私の対応が日本人らしくて気にいってくれてね。2、3カ月研修にきてほしいって。」
「そうなのか。じゃ、その間、僕とのことを考えてみて。」
「わかった。そうするね。」
「行くことが決まったら、知らせてくれないか?」
「うん、わかった。」
以前と同じように、穏やかな時間が流れていく。正志さんは、そういう空気を作り出す人だと、改めて感じた。