夫の優しさ、夫の強さ
ニューヨークの出来事 1
ニューヨークに来て、一週間が過ぎた。
日本的な対応が、お客様方に好評のようで、常に笑顔で返される。
回りのスタッフも、丁寧で心を込めた話し方に感心し、見習うようになりつつあった。
金曜日の昼過ぎに、芳賀さんから私に頼みがあるから、と支配人室に呼ばれた。
「実は、今夜、パーティーがある。パートナー同伴なんだけど、一緒に行ってもらえないかな。」
どうしてもパートナーが必要の時は、妹さんが行くことになっていたそうだ。
しかし、妹さんは昨夜から具合いが悪いらしく、私に頼んできたのだ。
「どういうパーティーですか?私でお役にたてますか?」
「仕事仲間のパーティーだけど、正式なものではないから気を張らずに大丈夫。ただ、皆ペアで出席するから、1人だと雰囲気を壊しそうで、いつも妹を連れて行ってたんだ。」
「芳賀さんは、お付き合いしている方は、いらっしゃらないんですか?」
「今はいない。いたら苦労しないがね。」
「わかりました。ドレスを持って来ていないので、衣裳部からレンタルしておきますね。」
「いや、ドレスは、僕のほうで、用意したから。」
と、大きな箱を渡された。