夫の優しさ、夫の強さ


「大西さん、出かけるの?」

隣の部屋から、芳賀さんが出てきた。

「はい、正志さん、いえ、山岡さんから、食事に誘われていて。」

「そうか。前の旦那さんだったね。」

そう言うと、芳賀さんは、何故か私と話ながら、ロビーまでついてきた。

「こんばんは、山岡さん。」

と挨拶までする。

正志さんも、何?と、怪訝な顔をした。

「実は、日本のグランドシティホテルの支配人、佐々木さんから、大西さんのことをよろしくと頼まれていまして、何かあってからでは遅いので、ご挨拶まで。」

と言われた。

私もいい大人で、離婚歴まであるのに、心配し過ぎなのでは、と思う。

まして、相手は、元の旦那様だ。

なんか、妙な感じだ。

正志さんは、

「ご心配には及びませんよ。紗耶香のことは、どんなことからも守りますから。命にかえても。」

「正志さん、大袈裟すぎです。」

芳賀さんは、そう言われ、睨むように正志さんをみていた。正志さんも、同じだった。
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