夫の優しさ、夫の強さ
『あれは、杏奈だよ。いったい誰が見たんだ?』
『ナタリーとシルビア、そしてサーヤだそうです。』
サーヤだと!
不味い、誤解されては。
俺は、紗耶香を探した。誤解を解くために。
紗耶香は、フロント業務中だった。
仕方がない、終わったら捕まえるしかないか。
しかし、噂と言うものは速いものだと、改めて知った。
その日の6時、フロントに出向き、話があるからと、支配人室に連れてきた。
『座って。』
『はい、そしてお話とは?』
『昨日のことだが、一緒にミュージカルに行ったのは、妹の杏奈だ。僕には恋人はいないと、前に話したと思うけど。』
『そう、妹さんでしたか?』
「日本語にしよう。二人の時は、日本語でとも前に話したよな。」
と、芳賀さんはいきなりタメ口になった。
私はちょっと驚いたが、
「そうでしたね。それで?」
芳賀さんが何を言いたいのか、理解できずに、聞き返した。