夫の優しさ、夫の強さ


「君に側にいてもらいたいと、心から思っている。だめだろうか?」

何と言えばよいのかわからず、私は俯いたままだった。

「突然で、驚かせたかもしれないが、俺は、本気だ。」

「びっくりしました。それに、私は離婚していて、もう再婚する積もりはなかったので。」

「離婚のことは、聞いている。そんなことは気にはしていないから。もっとゆっくり距離を縮めていきたかったけど、君がニューヨークにいる時間にも限りがあるから、俺のことを真剣に考えてほしい。」

「実は、正志さん、えっと前の主人ですが、彼からも復縁したいと言われていて、どう断ろうかと悩んでいたところなんです。
信じて裏切られることが、怖いのです。辛い時間を忘れられなくて。」

「俺は、裏切らないよ。君だけだ、こんなに愛しいと思ったのは。今までにはなかったんだ。君だけを大切にすると、世界中の人に宣言してもいい。」

「でも、私……。」

「とにかく、俺のことを見てくれないか。そして、やっぱりだめなら、それで諦めるから。ニューヨークにいる間だけでも、付き合って俺と言う人間を知ってほしい。その上で、判断してほしい。」

俺は、必死だった。

こんなにも全力で訴えたなんて、生きてきて初めてのことだと思う。
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