夫の優しさ、夫の強さ
『もちろんさ。こちらは日本からフロント研修にきている大西紗耶香さん、そして、こっちが妹の杏奈。』
『杏奈です。よろしくね!』
『大西紗耶香です。よろしくお願いします。』
『研修なら、ずっとニューヨークにいるわけではないの?』
『ええ。3ヶ月だけ。』
『そうなの。じゃあ兄さんと付き合うわけではないのね。』
ちょっと嬉しそうに言われた気がしたのは、気のせいだろうか。
『杏奈、俺たちは付き合い始めたばかりだ。これから、どうなるかは未定だ。』
『えっ、そうなの。』
今度は、ちょっとムッとした様子の杏奈さん。
やはり、康人さんを兄ではなく、男として意識しているのだろうか。
先ほど食事をしながら、康人さんは自分のことを話してくれた。
両親が離婚して、母親の芳賀家に引き取られた。
高校卒業と同時に、父親のいるニューヨークに来て、大学に進み、今に至る。
父親とは、元々行き来していたそうで、ニューヨークに来たいと話したら、母親も賛成してくれた。
母親は、日本で弁護士をしていて、独立した女性だった。だから、家を守ってほしい父親とは、上手くいかなかったようだ。