夫の優しさ、夫の強さ
紗耶香と付き合い始めて、三週間くらいになる。
まだ、一緒に食事をするだけだ。
今までの女性との付き合いのように、お互いに盛り上がってベッドインする雰囲気には、到底なれず、康人自身も、この先、どう進めていけばよいか、戸惑っている。
いつも自信満々で事を進めるのに、紗耶香に関しては、初(うぶ)な自分全開だ。
こんな自分がいたのだと、呆れて笑いが止まらない。
そして、そんな自分を楽しんでいるのも確かなのだ。
そんなある日、紗耶香の元の夫が、またニューヨークにやって来た。
紗耶香の話では、どうやら仕事で来ているようだが。
以前、復縁を申し入れられたとも話していたので、気になって仕方がない。
紗耶香は、復縁を断ると言っていたが、返事をどうするのだろうか。
心の中に不安と言う感情が芽生えていた。
こんなことも、初めて経験だった。