夫の優しさ、夫の強さ
正志さんが、またニューヨークにやって来た。
康人さんとのこともあるから、復縁の話を断るつもりで、食事をすることにした。
康人さんにも、きちんと断ることを伝え、グランドシティホテルのレストランの個室を予約してもらった。
「紗耶香の方から食事に誘ってくれるなんて、嬉しいけど、何か特別なことがあるの?」
と、正志さんは、にこやかに聞いてきた。
「そうね、特別かな。」
どう切り出そうか、ずっと考えてきたが、どう言ったところで、正志さんに嫌な思いをさせることにかわりはない。
「この間、正志さんからやり直したいと言って貰えて、ずっと考えていたの。」
「悩ませてしまって、申し訳ない。」
「いえ、正志さんの気持ちが嬉しかった。」
「でもやり直す気はない、と言うことかな。」
「ごめんなさい。」
「やはり、僕を許せないか。」
「許す、許さない、ではなくて、……。」
「紗耶香、正直な気持ちを聞かせて。」