夫の優しさ、夫の強さ
「正志さんとの暮らしは、穏やかて幸せだった。あのまま、ずっと一緒に暮らして行けると思っていたのに。」
「うん。」
「たとえ、彼女の子が正志さんの子どもではなくても、私を抱いている傍らで、彼女とも……と思うと、あなたの側にはいられない。側にいたくない。」
また、涙が溢れ出してきた。
そう、裏切られたことへのリハビリは、まだまだできてなかったのだと、改めて知った。
「きっと、あなたに抱かれる度に、思い出すと思うの。それは、一生かもしれない。」
「僕は、そんなにも、君を傷つけていたんだね。」
「あなたのことを全面的信じていたの。だから、裏切られたことのショックが、大きすぎたんだと思う。」
「紗耶香の気持ちは、わかった。」
「本当にごめんなさい。」
「いや、紗耶香が謝ることではないよ。僕が悪かったんだから。君は何も悪くないよ。」
「私よりも、正志さんにふさわしい人が現れるよ。」
「これからは、紗耶香の幸せを願っているよ。僕が幸せにしたかったけど。」
「ありがとう。」