夫の優しさ、夫の強さ


部屋に戻って、康人さんに連絡をした。

一部始終を包み隠さず話した。

「相手がわかってくれて、よかったな。」

「そうね、とても優しい人だから。」

「そうか、優しい人なんだ。だから、前の彼女のことも無下に出来なかったのかもな。だけど、俺は、それは違うと思う。何を一番大事にしなければならないか、見えてなかったんだよ。」

「一番大事なもの?」

「そう、結婚して家庭を持ったなら、当然、奥さんや子どもが一番だろ。」

「そうだね。康人さんの言う通りだね。」

「だから、彼は間違ったんだ。紗耶香を大事にしなければならなかったのにな。」

「夫の優しさは、奥さんだけにしておいてほしいな。」

「大丈夫、俺は、紗耶香が一番だから。こんなに大切な存在に巡り会えるなんて、俺は幸せだよ。」

康人さんの言葉に幸せを感じていた。

これから先のことはわからないが、康人さんと歩いていけそうな気持ちになれた瞬間だった。
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