夫の優しさ、夫の強さ


康人さんの腕の中は、とても安心して、居心地がよかった。

久しぶりに男性に抱き上げられ、いわゆるお姫様抱っこをしてもらい、幸せに思うのは、当たり前だろう。

部屋に戻り、ベッドに座らせてもらう。

「着替えて、横になる?」

「いえ、病気じゃないから、横にならなくても大丈夫。でも、着替えてゆっくりするから、康人さんは、仕事に戻って。」

「着替え、手伝うよ。」

「いや、大丈夫だよ。一人でやれるから。」

まだ身体の関係がないから、もちろん恥ずかしい。そこまで甘える気はない。


「じゃあ、後で食事を持ってくるよ。今夜は、部屋で食べよう。」


「わかった。助かります。あと、フロントの皆に、迷惑を掛けてごめんなさいと伝えて。」

「言っておくよ。でも、紗耶香がカートを止めなかったら、他のお客様が大変なことになっていたかもしれない。ありがとう、ホテルのために。」

「当然のことをしただけよ。」

康人は、そんな紗耶香に益々惹かれていく自分を、楽しんでいた。
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