夫の優しさ、夫の強さ
次の日の午後、康人の両親がホテルを訪れた。
『どうしたの?父さんだけなら分かるけど、母さんまでくるのは、珍しいね。仕事?』
『いや、杏奈から連絡が来て、康人の彼女に会いにきた。こうでもしないと、会わせてはもらえないからな。』
康人は心の中で〈杏奈のやつ、余計なことを〉と腹をたてた。
『まだ、付き合い始めたばかりで、紹介するのは早いかな。』
『康人も、いい歳だ。そろそろ相手を決めてもいいと思うがな。』
『俺も考えてはいるよ。やっと本気になれる女性と出会えたんだ。』
『私も会いたいわ。今夜は、一緒に食事をしましょうよ。』
『彼女に聞いてみるよ。実は、……。』
俺は、昨日怪我したことを説明した。
『素晴らしい女性のようだな。益々会うのが楽しみになったよ。』
『でも、初めに言っておくけど、彼女は一度結婚して離婚している。夫の浮気で、傷ついたことがある。だから、承知しておいて。』
『子どもは?』
『いない。3ヶ月で離婚したから。』
『そうか、今は何の問題もないんだな。』
『彼女の素性は、調べてもらってもいいくらいしっかりしているし、素敵な人だから。』