夫の優しさ、夫の強さ


次の日の午後、康人の両親がホテルを訪れた。

『どうしたの?父さんだけなら分かるけど、母さんまでくるのは、珍しいね。仕事?』

『いや、杏奈から連絡が来て、康人の彼女に会いにきた。こうでもしないと、会わせてはもらえないからな。』

康人は心の中で〈杏奈のやつ、余計なことを〉と腹をたてた。


『まだ、付き合い始めたばかりで、紹介するのは早いかな。』

『康人も、いい歳だ。そろそろ相手を決めてもいいと思うがな。』

『俺も考えてはいるよ。やっと本気になれる女性と出会えたんだ。』

『私も会いたいわ。今夜は、一緒に食事をしましょうよ。』

『彼女に聞いてみるよ。実は、……。』

俺は、昨日怪我したことを説明した。

『素晴らしい女性のようだな。益々会うのが楽しみになったよ。』

『でも、初めに言っておくけど、彼女は一度結婚して離婚している。夫の浮気で、傷ついたことがある。だから、承知しておいて。』

『子どもは?』

『いない。3ヶ月で離婚したから。』

『そうか、今は何の問題もないんだな。』

『彼女の素性は、調べてもらってもいいくらいしっかりしているし、素敵な人だから。』

< 63 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop