夫の優しさ、夫の強さ


再び車椅子を押してもらい、部屋に戻って来た。

康人さんは、

「両親も、紗耶香のことを気に入ったみたいだ。紗耶香、結婚を視野に入れて僕とのことを考えてほしい。」

「ありがとう。私も康人さんとのこと、真剣に考えてます。日本に帰る前に、気持ちを決めたいと……。」

「嬉しいよ。キス、して、いい?」

何故か、康人さんは、言葉を区切るように、まるで緊張するしている様子で聞いてきた。

紗耶香は、無言で頷く。

康人の唇が、紗耶香のそれと静かに重なった。

向きを変えて2度めのキスは、ちょっと深くなり、唇の中を堪能された。

そして、康人さんは、優しく抱き締めてくれた。
しばらくぶりのキスに、恥ずかしさを覚えて、紗耶香は、顔が赤くなるのを止められなかった。
正志さんしか知らない紗耶香にとって、康人とのキスは、夢の中の出来事にも思えるくらい、幸せを感じた。

正志さんとのキスが嫌じゃなかったが、康人さんのキスは、大事に扱われているのを感じさせられた。



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