夫の優しさ、夫の強さ
夜、ナイアガラホールのライトアップを見て、最終の便でニューヨークに帰る予定だったが、急に天候が悪くなり、飛行機が欠航してしまった。
仕方なく、近くのホテルに部屋を取り、一泊することにした。
平日なので空室があり、シングルを2部屋取ることもできた。
康人さんは、
「今夜は一緒に過ごしたい。でも、紗耶香の気持ちがまだだと言うのなら……。」
「私も、一緒にいたい、です。」
私は、俯いて、小さな声で答えていた。
その夜、私たちは、結ばれた。
康人さんは、優しく、私の体を労るように、私の中に入ってきて、
「紗耶香、愛してる。もう、放せない。」
「康人さん、私も愛してる。」
それは、最高に幸せな夜だった。
次の日、ニューヨークに戻った。
康人さんと過ごす毎日は、本当に楽しく充実していた。
今度こそ、幸せになれると信じて始めていたのに。
そして、パリに出張で出掛けて行ってた康人さんは、帰って来なかった。
何らかの事件に巻き込まれたのか、捜索したが、見つからなかった。
ご両親も、パリまで探しに行ったが、無駄足だった。
それからの私は、無虚な毎日を過ごした。
何もかもが始まったばかりなのに。
正志さんのと結婚生活も、始まったばかりで、突然壊れた。今回も?
康人さんの行方を心配しながらも、ニューヨーク研修を終え、私は日本に帰国したのだった。