夫の優しさ、夫の強さ


ニューヨークに着いて、直ぐに康人さんと会えると思っていたが、まず、康人さんのご両親と会うことになった。

今回、私の母親も心配して、一緒に来ていた。

母親と二人、グランドシティホテルに宿泊した。

そこに、康人さんのご両親が、来て待っていてくれた。

ロビーでお互いの紹介を済ませると、

「あの、康人さんは?」

母親がいるから、日本語で話す。

そこでお父さんから聞いた康人さんの話は、私のことを打ちのめすものだった。


康人さんは、パリで、男たちに絡まれていた女性を助けようとして、殴りあいになり、倒れたときにどうやら後頭部を打ち、記憶喪失になった。

持っていたバックや財布はその男たちに奪われ、素性が分からなくなっていたそうだ。

助けた女性が、ずっと面倒をみてくれていたが、その女性は、パリ在住ではなく、南フランスの自宅に帰るため、康人さんも、一緒に行くことになり、パリの捜索に引っ掛かからずに、今まで分からずじまいだったとのこと。

康人さんは、まだ記憶が戻らず、ご両親のことも思い出していない。

ご両親は、もしかしたら、紗耶香ならと、連絡をくれた。
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