夫の優しさ、夫の強さ
康人さんは、
「向こうで話そうか。」
「じゃあ、二人で話してきます。」
と、みんなに向かって、そして、ジェニファーの目をみて、私は言う。
二人で窓際の席に移り、向かい合って座った。
「体は、なんともないの?」
「ああ、なんともない。
心配をかけたと思う。すまないな。」
「無事でよかった。康人さんの顔を見て安心した。」
康人さんは、戸惑うように、少し微笑んだ。
「ニューヨークでの生活は、何も覚えてない?」
「ホテルや、自宅にも懐かしいような気持ちが沸いてはくるんだ。でも、はっきりとは思い出さない。両親の顔も、同じ。」
そして、言い淀むように、
「紗耶香のことも、ごめん。」
「仕方がないわよ。あなたのせいじゃないから。」
「ニューヨークの病院でも、これから、治療を受けることにしたんだ。仕事は、少しずつ短時間から慣れていくつもり。」
「紗耶香は、いつまでニューヨークにいられる?」
「1週間、休みを取ったの。でも、康人さんの様子をみて、その先を決めていくつもり。」
「そうか。俺も本当の自分を取り戻したい。力を貸してくれるか?」
「もちろんよ。側にいていい?」
「よろしくたのむよ。」