夫の優しさ、夫の強さ
その後、康人さんを病院に連れて行き診察を受けた。
お医者さまは、
『その方に対する意識が強かったため、ずっと奥底にあった記憶を突然の出会いで、呼び覚ましたのかまもしれません。これをきっかけに少しずつ、思い出してくるとよいのですが。でも、焦らず、回りも今まで通りに接してください。開きかけた扉をゆっくりと開いていきましょう。』
と言うことで、康人さんを見守っていくことにした。
なぜ康人さんは、正志さんを知っていたのだろうか。私と会っているのを見たとしか思い付かない。
康人さんは部屋に帰ると、少し横になるからというので、
「じゃあ、私も、部屋に戻るね。」
「一緒に寝てくれないか。誓って何もしないから、側にいて。」
「わかった。いいよ。」
二人で、上着だけ脱いで、ベッドに入った。
「紗耶香、彼のもとには戻らないよな。」
「私は、康人さんとずっと一緒よ。」
康人さんは、安心したように目を閉じてすやすやと寝はじめた。
私も、彼の腕の中で、眠りにつきながら、病院で康人さんのお母さんの言ったことを思い出していた。
『康人は、余程紗耶香さんが大事なのね。恋敵を忘れずに、紗耶香さんを守りぬこうとしたのだから。』
私は、無償に嬉しかった。