夫の優しさ、夫の強さ
私が日本に帰国することになると、康人さんが一緒に行くと言い出した。
私の両親にお詫びをしたいこと、そして、結婚の許しをもらうこと。
康人さんはあれから少しずつだが、記憶を取り戻しつつある。
ふとしたことを思い出しては、私に確かめてくるようになった。
笑顔が増え、二人で笑い声をあげることもある。
よかったと心から思う。
世界中の人に感謝してまわりたいくらいだ。
日本に到着し、とりあえず私の両親に会うために実家に行った。
「この度は、ご心配をおかけしてしまい、また紗耶香さんを長い間ニューヨークに留め置いたこと、申し訳ありませんでした。今、記憶が戻りつつあります。」
と、両親に頭を下げてくれた。
そして、結婚の申し入れをしてくれると、父が
「紗耶香は、一度、結婚に失敗しています。親として、同じ苦しみや悲しみをもう味わってほしくはないのです。芳賀さん、絶対に幸せにすると誓ってくれますか?」
「誓って、紗耶香を裏切ったり傷つけたりしません。」
と康人さんは、両親に約束してくれた。