僕は弟には勝てない
「すみません。散らかしっぱなしで」
僕はソファーの上の物を取り除くと、そこに彼女を座らせた。
「何か、飲みますか? お茶か、コーヒーか、野菜ジュースくらいしかありませんけど」
彼女はうつむいたまま、首を横に振った。
「えっと・・・テレビでもつけましょうか」
静かな事には慣れている。
いつも一人だから。
でも、今の静けさは落ち着かない。
人が二人いるのに、会話のひとつもないのはどうしたものか。
「僕、着替えて来ますので、テレビでも観ていて下さい」
僕はリビングをあとにした。
そして、隣の寝室のドアを開ける。
明かりを点けて、開けていた窓にカーテンを引いた。
そして、クローゼットからグレーのジャージの上下を出すと、それに着替えた。
部屋着兼パジャマ。
うちにいる時はいつもこの格好だ。
リビングに戻ったら、彼女は消えているのではないか。
もしそうなら、彼女は幽霊かもしれない。
そんな事を考えながら戻ってみると、ソファーに腰掛けたまま動かない彼女の姿があった。
良かった。
幽霊ではなさそうだ。
でも、なぜ僕のような男について来たのだろう。
嫌なら、僕が手を引いた時に払いのけていたはずだ。
彼女は、そうはしなかった。
それどころか、自ら僕の家に来たいと言ったのだ。
これって、どういう意味だ?
何かを期待して付いて来たはずはない。
僕には何の魅力もないんだ。
「あの、何か言って下さい。僕どうしたらいいか、わからないんです」
「・・・」
「そう言えば・・・」
僕は最初に彼女と言葉を交わした時の事を思い出した。
確か彼女は、彼氏を待っていたのだ。
その人は、どうなったのだろう。
遅れて来て、彼女がいない事を知って探しているかもしれない。
いや、もしそうなら携帯に電話して来るはずだ。
僕はソファーの上の物を取り除くと、そこに彼女を座らせた。
「何か、飲みますか? お茶か、コーヒーか、野菜ジュースくらいしかありませんけど」
彼女はうつむいたまま、首を横に振った。
「えっと・・・テレビでもつけましょうか」
静かな事には慣れている。
いつも一人だから。
でも、今の静けさは落ち着かない。
人が二人いるのに、会話のひとつもないのはどうしたものか。
「僕、着替えて来ますので、テレビでも観ていて下さい」
僕はリビングをあとにした。
そして、隣の寝室のドアを開ける。
明かりを点けて、開けていた窓にカーテンを引いた。
そして、クローゼットからグレーのジャージの上下を出すと、それに着替えた。
部屋着兼パジャマ。
うちにいる時はいつもこの格好だ。
リビングに戻ったら、彼女は消えているのではないか。
もしそうなら、彼女は幽霊かもしれない。
そんな事を考えながら戻ってみると、ソファーに腰掛けたまま動かない彼女の姿があった。
良かった。
幽霊ではなさそうだ。
でも、なぜ僕のような男について来たのだろう。
嫌なら、僕が手を引いた時に払いのけていたはずだ。
彼女は、そうはしなかった。
それどころか、自ら僕の家に来たいと言ったのだ。
これって、どういう意味だ?
何かを期待して付いて来たはずはない。
僕には何の魅力もないんだ。
「あの、何か言って下さい。僕どうしたらいいか、わからないんです」
「・・・」
「そう言えば・・・」
僕は最初に彼女と言葉を交わした時の事を思い出した。
確か彼女は、彼氏を待っていたのだ。
その人は、どうなったのだろう。
遅れて来て、彼女がいない事を知って探しているかもしれない。
いや、もしそうなら携帯に電話して来るはずだ。