イケメンなんか大嫌い
店を出てエレベーターのボタンを押したが、下の階にいちいち止まっているらしく、この7階まで中々到達してくれない。
「遅いね……」
エレベーターの表示を見上げながらつぶやくと、梨花がガラス張りのエレベーターの外に広がる、街のネオンを見下ろしながら、口に出した。
「……エレベーターって、呼ばないと来ないじゃない。なんか、人の心もそうなのかなって。ある程度呼び水してあげないと、すぐ、枯れちゃうのかなって」
その印象的な言葉に導かれ彼女の顔を振り返ると、同じようにわたしとゆっくりと顔を合わせた。
「ねぇ、いつから好きだと思ったの?」
「…………いつだろうね……それ、自分でもよくわからないんだ。あいつがわたしのこと好きかもって、思ったからかも知れないし」
照れくささと同時に何か気まずく視線を逸らすと、優しい口調で返してくれる。
「……相手が自分のこと好きなんじゃないかって感じて、意識し始める時ってさぁ。実は、自分も前から相手のこと気になってたりしない? 気になってるから、向こうの好意に気付くっていうか」
わたしの視線を感じると、柔らかな微笑みを向けてくれる。
パーマの掛かったポニーテールが揺れて、綺麗だと思った。
胸が熱く苦しくて、何故か涙が込み上げそうで唇を噛んだ。