イケメンなんか大嫌い
駅を出ると、わたしの実家の方角へ歩き出そうとした俊弥を後ろから呼び止めた。
「……そっちじゃないんで。もう此処で結構です。さようなら」
振り向いた人は、やや目を見開いている。
「……引っ越したの? 家まで送るって」
「……ひとりで住んでるから、あんたに知られたくないんだって」
「俺が西田係長に怒られんだろ」
「黙ってりゃいーでしょ、そんなこと」
わたしは青筋を立て、こちらへ突き進んで来る俊弥の腕を押し戻そうとする。
「……実家の近所に住んでるってこと? あのおじさんがよくオッケーしたな。どうせ彼氏連れ込みたいからじゃねーの……」
「……だから、あんたに関係ないでしょっ?」
──あ、やばい。
なんか泣きそう……。
心を渦巻く感情が溢れ出しそうな気配がして、わたしは俊弥に背を向けた。
次の瞬間、その場を駆け出した。
「──おいっ……」
背後から叫び声が聞こえたけれど、振り返らずに走った。