イケメンなんか大嫌い
すると、いつの間にかすぐ傍に接近して来ていた背の高い男性店員が声を掛けて来た。
「……もしかして、市川さんですか?」
視線を上げ顔を見合わせた俊弥の表情が、ぱっと明るくなる。
「あっ……金子(かねこ)さん? 何でこの店に」
「今日は応援で来てるんですよ~」
どうやら他の店の店員らしく、顔見知りであることに驚く。
そういえばこいつは人当りが良いんだったと思い出し、何だかわからないが微かに胸が騒いだ。
「今日は彼女さんと一緒なんですね? 羨ましいな~美男美女カップルじゃないですかー」
突如視線を向けて来た“金子さん”と目が合ってしまう。
思い掛けずわたしが会話の中心に及び、且つ“彼女”というワードが出たことに気後れした。
「いやーこの人、こう見えてすごい猫被って……」
「……ちょっ……何言い出すのよっ」
恥ずかしさの余り、ジャケットの袖を掴み小声で止めに入ると、片眉を下げ楽しそうに笑った。
その表情に心臓を掴まれてしまい、肯定も否定もしなかったと、薄らと引っ掛かった胸の内は、隅っこに追いやられた。