イケメンなんか大嫌い

「僕も彼女さん推しの色の方がお似合いかと思いますよ~。くすんだブルーが綺麗ですよね」
「あ、これは頂きます。後、この間見てたシャツが再入荷になってたと思って……ボタンが全部微妙に違ってるやつなんですけど」

あの服、買うのか……。
気恥ずかしくも横目でちらちらと視界に収めつつ、店員と話し込み始めてしまった為、居づらく周囲を眺めてみると、背後にアクセサリーのディスプレイを見つけた。
男物と女物を左右に分けて配置してあり、デザイン性の高いネックレスやファッションリングなどが飾られている。

「欲しいの?」

指輪の可愛いさに惹き付けられ、しばらく見つめていたのだろう、声を掛けられ我に返った。
知らぬ間に背後に立った俊弥が、買い物袋を肩の上で持ちながら、まじまじと見下ろしている。

「指、何号?」
「えっ……一般的なサイズだと思うけど……。見てただけだよ」

「9号か」
「……いや、買わないし。良いじゃん、サイズなんて。買い物終わったなら行こっ」

堪らず話を遮り、一歩踏み出した。
後頭部に俊弥の視線を感じたような気がしたが振り返らずに進むと、黙ったまま隣を歩き出したので胸を撫で下ろした。

しかし、一般的なサイズと聞いて9号と即答したことに、不安感を強めた。
男子も知っているものなのだろうか。それとも女の子に買ったことがあるとか……。

……いや、わたしだって賢司くんが誕生日のプレゼントにと提案してくれたことがある。
あの時は、指輪なんてそんな愛の証そのもののような物を身に付けられないと怯んで、別の物にして貰った。

心の騒めきに気付かない振りをして、唇を結ぶ。

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