イケメンなんか大嫌い

外へと繋がる通路を進むと、随分と日没が早まったこの時期、既に夕焼けが眩しかった。

「ちょっと疲れたな。休憩する?」
「そうだね……」

「あれ乗る?」

指差された先に目をやると、日の落ち掛けた空に浮かぶ観覧車が光を放ち、綺麗だった。

列は空いており、すぐに順番が回って来てしまった。
勢いで乗り込んでしまったが、俊弥とこんなベタなデートをする日が来ようとは……なんて心の中で突っ込みながらも、実は嬉しがっている自分にも気付いている。

王道中の王道スポットである、過去にも男子と一緒に乗ったことはあるが、こんなにも緊張を募らせたことはなかった。
ときめき半分、疑り半分といった心持ちで前の人を窺い見たが、綺麗な横顔は黙って景色を眺めていた。
こうしている間にも辺りはどんどんと宵闇を纏い始め、ショッピングモールのネオンの煌めきが美しい。

「……綺麗だね」

沈黙が心苦しく、当たり障りない感想を述べると、俊弥が背もたれの後ろへ身を乗り出し気味で窓の外を見上げた。

「あれ見てみ」
「何?」

「未麻チャンの大好きなオリオン座」
「……」

その声には、からかいの色が含まれていたが、振り向いた顔は優しい微笑みだった。

「また馬鹿にして……」
「来いよ」

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