イケメンなんか大嫌い

気配を感じ薄く瞼を開くと、唇が触れ合いそうな至近距離に俊弥の顔が迫っていた。
我ながら眉を下げた蕩けそうな顔をしていたように思えて、一層頬を熱くする。
もう一度瞼を閉じると、キスが降って来た。

次第に深く、何度も唇が重なる。
倒れないように大きな手が首の後ろを支えていて、わたしは無理な姿勢を崩さないよう、俊弥の胸元の服を掴んでしまっていた。
舌を絡め合う艶っぽい音が段々と大きくなって耳に届き、身体が痺れそうに熱を持つ。

ちらりと周囲の状況を横目に入れると、観覧車は間もなく頂上へ到達するようだった。

「……あっの……もう……」

必死で顔を背け抵抗を示すと、掴まれた手首に篭められた力が伝わる。
その顔に視線を流すと高揚感が窺い知れ、わたしまで耳を赤く染めた。

「……もう、何?」
「……今は、やめよ……。後ろの人に……見えちゃうし……」

合わせていられずに目線を落とし、どぎまぎしつつも答えると、口元に人差し指を立てた意地悪な顔が笑った。

「……じゃあ、未麻から、してよ。そしたら、大人しくするから」

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