イケメンなんか大嫌い
「……っ」
驚いて絶句した顔は、情けない表情をしていただろう。
目を見開き固まっている間に、手首を引かれて腕を肩に回させられてしまった。
何かを訴え掛けて来るかのような、色っぽさも感じられる上目遣いに動揺を顕にしてしまう。
どうしてこんな体勢になったのか。
引っ張られた腕につられて重心が上半身に掛かっている為に、身体を上手く起こせず俊弥に寄り掛かるような形になってしまっている。
適度な距離を取れないまま、自覚した時にはもう心臓が爆音を立てていた。
何分目を合わせていたのか、生唾を飲み込んだ瞬間、生まれてこの方、自分からキスなんてしたことがないと気付いた。
我ながらその事実に唖然として、たじろぐ。
『大人しくする』なんて、まるで子どものような可愛らしい言い回しをしているが、要求は意地悪でそれが返ってわたしの情欲を煽った。
そうこうしている内に観覧車は頂上を過ぎ、折り返しに差し掛かっている。
今のタイミングでは、後に続くゴンドラから丸見えだ。
キスする以前に、既に抱き合っているのが見られているかも知れないと思うと、恥ずかしさで余計に心音が大きく鳴った。
俊弥の鋭い眼差しが余りに近く、目を細めながら自分の身体の内側の火照りを感じる。
勢いに乗って、キス出来そうに思えて来る。
小さく息を吐き出すと、俊弥の前髪が揺れる程の至近距離だ。
震えそうな身体を徐々に近付けた。
なかなかキスしないわたしに、俊弥がまるで助け舟か何かのように、口に出した。
「目、閉じようか?」