イケメンなんか大嫌い

地上へと到着し、甘い空間は終わりを迎えようとしている。
先にゴンドラの外へと降りた俊弥に続き、立ち上がると逆上せた身体のせいか僅かによろめいてしまう。
振り返った人が手を差し伸べた。

何だろう、この少女漫画のようなシチュエーションは。
頬を染めて相手と手を重ねているなんて、客観的に見れば寒気でもしそうな程のキラキラしたシーンだ。
全くもって自分らしくないと思えるのに、この時間が終わって欲しくないなどと考えてしまっている。

「飯食うか」
「……うん……」

そのまま手を取って歩き出した横顔も、僅かに赤面しているようだった。

ハワイアンカフェみたいな店に入り、適当に数品注文したけれど、胸がいっぱいであまり食事は進まなかった。
華やかなトロピカルカクテルの甘さが身に染み入る。

普段からそんなに喋るほうではない俊弥も、いつも以上に言葉少なだった。
店内の騒々しさと、ウインドウの外に点滅するネオンの輝きばかりが意識に入り込んだ。

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