イケメンなんか大嫌い
あまり会話を交わさないままに、わたしの家まで辿り着く。
繋いだ手がアパートの前で立ち止まり、つんのめった。
振り向くと、何かを考えるように瞼を伏せていた。
「……えっと……お茶飲んでく……?」
「……明日あるから帰る」
勇気を出した誘いに応じなかった、俊弥の予想外の答えに言葉を失ってしまう。
戸惑ったわたしの姿を目に入れると、見透かしたように続けた。
「……襲わない自信ないから……。そういうのばっかじゃ嫌だろ。俺は男だから良いけどさ……」
はにかんだような顔が、そっぽを向いて驚く。
そんなこと思わないけどな、と過ぎらせた自分にも。
「……そ、そっか……。じゃあ、おやすみ……」
何と返して良いのかわからず、顔を赤くして微妙な相槌を打つ。
もじもじと目線を落とし、指先で服の裾をいじらせながら力なく笑みを作ると、頬に触れて来た冷たさに僅かに身体を揺らす。
顔を上げると、優しく撫でる冷えた指先と、真っ直ぐな切ない眼差しに射抜かれ、胸が熱くなる。
瞬間、おでこにそっとキスが落された。