イケメンなんか大嫌い
連絡を取らないまま、木曜日を迎えた。
仕事上のやり取りも発生せず、1時間の残業を終え地元の駅の改札を出る。
スマートフォンの時計で19時半を過ぎたことを確認し、ウールコートのポケットに仕舞いながら、わたしはようやく決意を固めていた。
22時頃になっても音沙汰がなければ……連絡しよう。
今日こそは勇気を出したいと、前を見据え階段を登った。
商店街を歩み出すと、背後から声が届く。
「未麻ちゃん」
振り返ると希英ちゃんがにこやかに手を振って、ヒールを鳴らしながら駆け寄って来た。
「希英ちゃん。仕事帰り?」
「うん。同窓会ぶりだねー。っていうか同窓会でちゃんと話したから声掛けれたけど」
「そうだね、見掛けてもそもそも本人か確信持てないとこあったかも」
「わかる」
きゃっきゃと歓声を上げ、再会を歓び合う。
「……あ、そういえば私あの後、ちょっと小耳に挟んだんだけどさー……高校の友達が市川くんのこと知ってて」
希英ちゃんが何やら眉をひそめつつ、片手を口元に添えた。
会話に上った人の名前に、ドキッと大きく鼓動が鳴る。