イケメンなんか大嫌い

「……あれ……? 電気点かない……」

消え入るような声で呟くと力が抜け、ぺたりと床に座り込んでしまう。
暫し放心していると、希英ちゃんの言葉が頭の中をぐるぐるとリピートする。

『高校から大学の頃、相当女の子食ってたみたいな噂』

──中高生の頃に出会って来た、イケメン達と違わなかった。

下手したらもっとタチが悪いかもしれない。
女を馬鹿にして、性欲と私利私欲にまみれた男達。


思い至ると、床の上で握り締めた手が不意に震える。
歯を食い縛ったが、堪え切れず涙が溢れてしまった。

「……っく……」

嗚咽を漏らしながら瞼をきつく瞑ると、頬から滴りフローリングの上を濡らした。


一体何に傷付いているのか。想像を超えていたこと?
本人に確認したわけじゃないけれど、これまでの発言から察するに、きっと本当のことなんだろう。

手首で涙を拭いながら顔を俯け、虚ろな目で床とラグの境目を見つめていた。

……なんでこんな振り回されて……あー、やっぱ思ってた通りじゃん、うん。
未知の生物だもん。

自分に言い聞かせ心を納得させようとすると、暗闇の中にぼんやりと浮かび上がったのは、近頃わたしに向けてくれていた穏やかな笑顔や、はにかんだような表情だった。

……今の俊弥は……違う?
今見えている俊弥は、わたしと向き合おうと心を注いでくれていたように思えた。

だけど……一体俊弥の何処までが見えているんだろう。
見ることが出来ているんだろう。

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