イケメンなんか大嫌い

顔を埋めた胸元の服を掴み、恐れから表情を確認することが出来ない。
微かに動揺を滲ませたようにも思われた、目の前の人の大きな手が髪に指を通しながら、頭上で静かに口にする。

「飯は」
「……食べてない……」

「食うもんあんの?」
「昨日の残り……」

優しく頭を撫でたかと思うと、わたしの浅はかな期待を裏切った。

「じゃあ、それ食って今日はもうゆっくりしたら? 疲れただろ」

どうしてそんなに優しくするの?
どういうわけか目頭が熱く、縋るように見上げてしまう。

「……の?」
「未麻?」

「……帰るの?」

見つめると、心底驚いたように目を見張った。
その面立ちに傷付いた瞬間、苦しそうに歪められる。

「……煽んなって……」

途端腕を引かれ、唇を奪われた。

「ふ……」

背中にしがみつき、瞳を閉じて俊弥の舌を受け入れる。
求められる今が、どうしようもなく嬉しいのに、頭の中ではやはり先程の希英ちゃんとのやり取りがこだましていた。

『その頃遊ばれた子が友達の友達みたいでー……』

脚と脚の間に膝を付き、服を乱すその手は、どこか遠慮がちにわたしの上を滑る。
瞼を上げると、目の前に切なげな瞳が飛び込んで来た。

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