イケメンなんか大嫌い
「仕事終わりだからオイル臭いかも。シャワー浴びて来たんだけど……」
「そんなの感じたことないよ」
「……未麻ちゃんみたいな、可愛くて大企業のOLさんが俺みたいのと付き合ってくれてるだけで幸せだな」
「何言ってるの、賢司くんは立派な仕事して、優しくて素敵な男の人だよ」
穏やかに微笑み合うと、胸に安心感が広がった。
賢司くんは、専門学校を出て自動車整備工場で働いている。
顔も身長も10人並。わたしと違い、決して立ち回りは上手くなく、嘘のつけない不器用さがある。
そんな彼だから、安心感を抱いている。
お茶を煎れひと息付き、賢司くんと他愛もない話をしているさなか、俊弥の言葉が脳裏を過ぎる。
『よく彼氏騙してんね』
満面の笑みを見せる、目の前の人を眺めた。
……嘘を言っているつもりはない。
ただわたしは、いわゆる“3高”みたいな、ハイスペック男子が苦手なんだ。
──その根源が、あの男……。