イケメンなんか大嫌い
その時わたしを突き動かした、何かの正体はわからない。
心を思いやる仕草を、触れる指の優しさを、壊したい衝動に駆られた。
「……違う………そんな優しいの、俊弥らしくない」
見下ろす目の色が、変わったような気がした。
脳内に点された警告の光を無視して、続けた。
「気持ち悪い」
立膝で上体を起こした身体は、威圧感を醸していた。
蔑みを宿し光を失ったような目元が、眉を顰めている。
「……あーそう……。なら、お望み通り、虐めてやろうか」
刺すような冷たい眼差しと、伸ばされた指先が喉元に触れて、ぞくっと身体の奥に熱が迸った。
鼓膜を直接震わす息遣いと、直に触れずに際どい箇所ばかり這わせている指を感じながら、段々と大きくなる下腹の疼きに焦れた。
頭にチカチカと星が回った頃、滲んだ涙も開いた口元もそのままで、肩で息をつきながら流し見た彼の表情は、険しく汗を滴らせながらも儚げで、恐ろしい程に美しかった。
『ストーカーされて嬉しがって』
卑しく抱かれながら、お兄の言葉が脳裏を過ぎった。
邪険にされても向かって来て、諦めないでいてくれた、これまでを思い描きながらシーツを握り締める。
──この人を試した自分を、知っていた。
どこまでやっても、付き合ってくれるのか、確かめたかった。
身体が満たされれば、心も満たされたように、錯覚出来た。