イケメンなんか大嫌い

翌土曜日は朝はゆっくりして、近所で唯一の有名なカフェでランチを取った。

「美味しい~幸せ~♡」
「未麻ちゃん、ほんとこのカフェ好きだよね」

リゾットオムライスを口に運びながら、至福を噛み締める。
そんなわたしを穏やかな笑顔で眺める賢司くん。

「だって此処しか良いお店ないもん、この町! 近所でって言ったらさぁ……一応市内なんだけどなぁ、ここ」
「……俺が実家だから、必然的に未麻ちゃん家の近所が多くなるよね……。でも週末休める時は未麻ちゃんとゆっくりしたいし……」

「うん、わたしもまったりしたいし、良いんだよ~」

満面の笑顔でフォローを返す。

自動車整備士の給料は低いようだ。
賢司くんにお金がないことは理解しているし、月1~2回の土日の休みを全てわたしと過ごすことに充てているけれど、あまり街やデートスポットに繰り出すことはない。
わたしもあまり人ごみが得意ではないから、これはこれで良いと思っている。

店を出ると、空気の冷たさに自然と寄り添い合った。

「DVD借りて帰ろー」

腕を組みながら話していると、何となく視線を感じたような気がして、後ろを振り返る。
だけど、誰も居ない。

「未麻ちゃん、どうした?」
「……ううん、何でもない」

賢司くんに向き直って、アスファルトを踏み出した。

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