イケメンなんか大嫌い

週明けを迎えた。
出社すると早速、前園係長に挨拶のようにからかわれるのだった。

「香坂さんと市川くんが幼なじみなんてびっくりしたよー。色々若かりし頃の思い出あるんじゃない? 今も若いけど」
「ただの腐れ縁ですよ……。わたしもびっくりしたんですよ、気付いてなかったんで」

係長、楽しそうな笑顔ですこと……。
デスクに書類を並べ仕事の準備をしながら、苦笑いを返す。

「そうなの? 同姓同名の別人と思ってた?」
「……いえ、名字が変わってたんで……」

話しても良いものか躊躇ったが、他に誤魔化しようもない。
口に出してから、ファイルを持つ自分の手元へ視線を落とした。

……わたしも、相手が俊弥といえ、離婚のことを軽く扱い過ぎたかな……。
心の中で少し反省する。

「……そう。感じの良い子だよね、前から思ってたけど対応も早いし丁寧だし」
「……まぁ……仕事に関してはそうかも知れないですけど……昔から外面は良いんですよねぇ」

頭にこれまでの俊弥との電話でのやりとりを思い浮かべつつ、眉間を寄せた。
確かに仕事の対応をしていて嫌な印象を受けたことはなかった。

だからこそ先日の豹変ぶりに腹が立ったものだけれど。

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