イケメンなんか大嫌い
今思えば、それが俊弥を意識し始めたきっかけだった。
5年生に上がると、さすがに男子との手足が出るような喧嘩は卒業し、俊弥と喋る機会も激減していた。
しかも、ずっと同じクラスだったわたし達3人が初めて別々に離れたのだ。
わたしひとりだけ違うクラスとなり、新しい友達と過ごす時間が増え、愛唯ちゃんとの関係も薄れがちとなって行った。
そんな折、お母さんから珍しいおつかいの司令が出る。
「俊弥くん家だけどね、お母さんが入院されたのよ。お父さんも出張で家を空けてて、親戚も遠方で頼れないみたいだし……俊弥くんにおかず持って行ってあげて」
「……俊弥、今日ひとりなの?」
「うちに泊まってもらったらって言ったんだけど、俊弥くんが嫌がってるみたいで。小学生ひとりでなんて、大丈夫なのかしら……」
タッパーの蓋を閉めたお母さんが、頬に掌を添えつつ溜息を漏らした。
俊弥の家の事情など全く耳に入って来ていなかったわたしは驚いたが、関わり自体が減っていた当時は特に反抗心もなく、大人しく俊弥の家へ向かった。
すると自転車を押して出て来た俊弥と鉢合わせた。
「どこ行くの? もう日が暮れるよ? 最近、変な人が居るからって学校で……」
「……じゃあ、一緒に来てよ」