イケメンなんか大嫌い
そんな係長は今わたしの顔が引き攣っていることなど全く気が付かないまま、お相手の係長、西田さんと盛り上がっている。
西田さんにはもちろん初めて会ったが、ダンディーでお洒落な雰囲気の素敵な男性だ。
快活で健康的な前園係長とは全く違うタイプ。
「本当に今回のファインマート居抜き50店舗開店、お世話になりました!」
「とんでもない、家の最寄駅の売店もファインマートに変わったもんで、感慨もひとしおですね」
わたしは皆の話に耳を傾けつつも、周囲に目を光らせていた。
接待ではないと聞いてはいても、こういう時に上手く立ち回らないといけないという、強迫観念めいたものがわたしを突き動かす。
西田さんのグラスが空きそうだ。
「西田さん、お飲み物はどうされますか?」
満面の笑みを作り、すかさずドリンクメニューを差し出した。
「じゃあ、生おかわりしようかな」
タイミング良く天ぷらを持って来た店員に生ビールを注文し、大皿に盛られた天ぷらを取り分ける。
「香坂さん、気が利くねぇ。モテるでしょう」
「係長、それセクハラです」
酒が回り始めたせいもあって上機嫌の西田さんに、部下でありこの会のもうひとりの女性である坂井(さかい)さんが厳しい突っ込みを入れた。
ストレートのロングヘアに眼鏡の似合う、いわゆるクールビューティーだ。
「とんでもないです、恐縮です」
そう返した時、何となしに視線を感じ、冷や汗が流れた。