イケメンなんか大嫌い
……酷いのは、わたしか。
「……今日は、ひとりで体調整えたい……。ごめんなさい……」
目は合わせられず、俯き呟いた。
「…………わかった」
頭上から耳に届いた声は、少し掠れている。
遠慮がちに顔を上げると、眉を下げた微笑みと目が合う。
その手がわたしの頭を優しく撫でた。
「お大事に」
去って行く賢司くんの後ろ姿を、一度振り返り見送った。
せっかくの休み前、楽しみにしてくれていたお泊まりを台なしにしたにもかかわらず、優しい賢司くんに胸が痛む。
誰も居ない部屋へ帰り着き、へなへなと床に崩れ落ちた。
──何を今さら、傷付いてるんだよ。
噛み締めた唇が震えて、微かに嗚咽が漏れる。
あの頃、自分の気持ちに気付かなかった、わたしが悪いのかな。
それでも……今さらわたしが、傷付けられなきゃいけないの?
涙でぐちゃぐちゃになった顔を、構わず掌で豪快に拭った。
あんたが残して行った傷痕を、どうして更にえぐるような真似するの。
土足で踏み込んで来ないで……。
拭っても後から涙が溢れて、しばらくその場に座り込んだまま、動けずにいた。