イケメンなんか大嫌い

ぐうたらと土曜日の午前中が終わろうかという時刻まで、惰眠を貪っていた。
目を擦りあくびをしながら、ようやくむくりと起き上がり、朧気ながら意識を働かせた。
賢司くんは仕事だし、特に予定のない週末、普段なら部屋に籠って漫画三昧という色気のなさ過ぎる休日を謳歌するはずだが、この土日に限ってはひとりでいると気分が塞ぎ込みそうな予感がする。

湯船に浸かって暫しぼんやりと思い巡らせた後、牛乳を一気飲みしたところで、心が決まった。


久しぶりに実家の玄関をくぐる。
扉の開閉音を聞きつけたお母さんが、居間から顔を出した。

「……あんた、帰って来るなら連絡入れなさいよ。居たから良かったけど」
「……ただいま」

やや気まずく、苦笑いを浮かべる。

リビングの入口に立つと、11月に入ったばかりだというのに、テレビの前に既に炬燵がお目見えしていた。

「……早くない?」
「歳かしらねぇ、冷えるのよ~」

呆れたような面持ちで突っ込んだわたしを意に介することもなく、お母さんが中へ潜り込む。
物申しつつも隣に腰掛けると、当然の如くサッと目の前にお煎餅が置かれた。

「で、どうしたの?」
「……別に、どうもしないけど。安否確認よ、安否確認」

いささか照れくさく、唇を尖らせて可愛げのない返答を呟く。
目線を手元に落としながら、お煎餅の包装を破った。

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