イケメンなんか大嫌い
またしても深呼吸を繰り返した後、パタパタと顔を手で仰ぎながら廊下を歩き出すと、少しばかり頭の中も冷えて来る。
高揚した空気に呑まれ忘れてしまいそうだったが、苦言を呈されたことには変わりない。
……本当のことを言われて、傷付いた自分にだって、気付いている。
心の整理は付かないままだけれどひとまず横に置いて、わたしの想いなんか関係ない皆に迷惑を掛けないようにしなければ。
席へ近付いて来ると、皆の話し声が漏れ聞こえた。
わたしなどお構いなしに楽しんでくれていて助かった。
瞼をぎゅっと瞑り、緊張した胸元を掌で押さえた後、顔を出す。
「……ごめん……戻りました」
どうにか笑顔を作ると、愛唯ちゃんが真っ先に声を上げる。
「未麻ちゃん! 良かった戻って来てくれて」
「……すいません……」
両手で肩を掴まれ、心配そうに見つめる彼女に申し訳なく、苦笑いを返すしか出来なかった。
「まったくコイツは言って良いことと悪いことの区別くらい付けろってんだよなー!」
「いてっ」
津村くんが俊弥の頭を小突き、皆の笑いを誘った。
幾ばくか皆の話題の聞き役に回っていたが、間もなく会はお開きとなった。
なるべく普段通りに笑顔を絶やさないよう心掛けたが、やはり気遣わせてしまったかもしれないと嘆息を吐く。
大分夜も更けて来たので、妥当な時間だったのかもしれないが。