イケメンなんか大嫌い
店の外に出てから、支払い金額の確認をした。
「愛唯ちゃん、これ……良いかな」
会計を済ませた俊弥に直接手渡すのが気まずく、自分の代金は愛唯ちゃんに託してしまった。
微かに笑みを浮かべ、頷いてお札を受け取ってくれたのでホッとしたのも束の間、俊弥以外の男性陣は何やら会議を始めた。
「香坂と俊弥は家近いんだったよな?」
「いやでも……」
「……何の話?」
木原くんと津村くんの間に割って入ると、ややバツが悪そうに返された。
「もう遅いし、女子送って行こうかって」
瞬時に状況を理解し、異議を申し立てた。
「わたし、ひとりで帰れるから! そんなに遠くないし! まだ11時だし!」
「でも、送ってく流れになってるし~……」
これ以上俊弥とふたりきりになるのは、何としても避けたかった。
「俺は構わないけ」
「ナベくんっ! じゃあナベくん送ってくれる!?」
話に入って来た俊弥の声に被せるように、ナベくんの袖に縋り付き見上げた。
ナベくんはきょとんとした表情で見下ろしていたが、余りに必死なわたしを不憫に感じたのか、笑顔に変わった。
「あぁ、じゃあ送ってくよ」
「ありがと!」
助け舟を出してくれて、やっと強ばった表情を和らげる。
「じゃあ、今日はありがとなー!」
「また集まろうね~!」
声を掛け合っていると、愛唯ちゃんが小走りで駆け寄って来た。
「未麻ちゃん!」
両手をわたしの手に重ねて、真っ直ぐな目で続けた。
「またしばらく会えないと思うけど……また絶対会おうね!」
「……うん。会えて嬉しかった」
愛唯ちゃんの想いが嬉しく、穏やかに微笑み返すと、満面の笑顔を見せてくれた。