イケメンなんか大嫌い
皆と手を振り合った後、俊弥と愛唯ちゃん、残りの3人とは分かれて歩み出した。
目の端に遠目に映る、去り際の俊弥の刺さるような眼差しを認識したが、そのままお互いに背を向けた。
「夜は冷えて来たな~」
歩きながら夜空を見上げるナベくんの、白い息が流れて行く。
短い黒髪が確かに寒そうだ、などとどうでも良いことを心に浮かべつつ、後ろめたさにも囚われていた。
「……ごめんね。巻き込んで」
居たたまれずに瞼を伏せ、呟いた。
ナベくんは何か思い巡らせたのか、少し間を置いてから言葉を発した。
「全然良いけどさ。あいつが悪いと思うし。……まぁ、根は悪い奴じゃねぇの香坂もわかってるだろ?」
「…………」
そうなんだけど。
心の中でだけ相槌を打って、口に出すことが出来なかった。
その後はほとんど無言でてくてくと夜道を歩き、10分程でアパートへ到着した。
「送って貰ってありがとう。気を付けて帰ってね」
せめてお礼だけは笑顔で言おうと口角を上げると、困ったように微笑んだ。
「あんま気にすんなよな。今日は本当に楽しかったし」
「……うん、ありがと」
「これに懲りずに、また集まろうぜ。何だったら俺、幹事するし」
「……そうだね」
去って行くナベくんの後ろ姿を見送った。
途端静まり返った夜の気配に包まれ、多くを語らない彼の確信だけ突いて行った言葉が、頭の中でリピートされていた。