熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
事の始まり

PM14:00 成田空港


空港へ向かうリムジンバスは、ほぼ定刻通りに第2ターミナルビルに到着した。

ちょうど今、私は、ツアー客を連れて3Fの出発ロビーまで来たところだ。

これから、航空会社のチェックインカウンターでパスポートと航空券を提示し、搭乗券を受け取る。

それで、二週間の旅の最後の仕事になる。


私は、お客様に注意事項の説明と、チケットの最終確認を行った。


二週間の間、私は、アメリカ人のウォーレス夫妻と、全国の桜の名所を旅行して回った。


今年の桜のツアーは、旅行会社泣かせだった。

例年なら、桜前線を追って日本列島を北上するのだが、今年はそうはいかなかった。

桜の開花が例年通りでなく、予定が大幅にずれてしまったからだ。

夫妻が日本に到着したとき、最初に訪れるはずだった九州の桜は、まだつぼみの状態。

逆に、旅の行程で最後に訪れるはずの、東京の桜が先に咲き出してしまった。


旅行期間中、なるべく満開の桜が見られるようにと、夫妻と相談して、日程を組み直すことにした。
だから、実際に訪れた場所は、あらかじめ計画した旅行と、まったく違うものになってしまった。

「こんなことは、珍しいんです」

何度もそう言って、私は夫妻にお詫びをした。

「本当に来てよかった。思い出に残る旅になったわ」

「そう言っていただけると、嬉しいです」



旅というのは、不思議なものだ。

こうしてアクシデントに見舞われた方が、印象に残る思い出の旅になったりする。

案外、予定通り何のトラブルもなく終わった旅のことは、記憶に残らず忘れてしまうものだ。


この後、夫妻がロサンゼルス行きの飛行機に乗れば、すべての日程が終わりになる。


半年前、
「美夜、今度は、あなたと日本の桜を見たいわ」という奥様、スーザンの希望で、日本中の桜を追いかける旅の計画を立てた。

この夫婦を案内するのは、今回で3回目だ。

私は、夫妻の好みは十分に把握している。

計画した旅程とは、まったく違うものとなったが、本当に楽しい旅だった。
そして、今日ですべての行程を終える。

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