熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~



本当に黒塗りのリムジンで現れて、
中に入れと言われた。

どんな乗り心地だかよく覚えてないけど。

素晴らしかったと思う。

凄く緊張してたから、
どこが素晴らしいのか気が付かなかったけど。

とにかく、革張りのシートが落ち着かなくて、
車の中は、だだっ広かった。

スペースを有効に活用しようと思って、
思いっきり離れて座ったんだけど、

彼の方が近寄ってきて窓際に押し込められた。

それからは、ずっと窓の外を見てたから、
はっきり言って、
リムジンの良さはわからなかった。

乗ったのは一度きりだから他と比べようがない。


彼は時々、黒い魅惑的な瞳で私のこと見ていた。

幸いなことに、彼は車に乗ってる間、
いろんな言葉で方々に電話をかけたり、

パソコンで作業をしたり、
あるいは両方だったり。

車に乗ってる間、ずっと仕事をしていた。

だから、私に話しかけては来なかった。


どうして、こんなに忙しく
電話なんかしてるんだろう。

相当、男前なんだから、
こんなに働かないで、
落ち着いて座っていればいいのに。

こんなにゴージャスに生まれたのに、
モデルの仕事とかすればいいのに。

もったいない。

せめてリムジンの写真くらい、
撮らせてもらえばよかった。

一生の記念になるし。

謎のアラブ人に、
リムジンで送られたって言ったら、
千紗なんて言うかな。

夢見てんじゃないっていうだろうな。

でも、本当に夢みたい。


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